「子ども同士のけんか、どうしたらいいの?」
この悩みは多くの先生が抱えています。もし怪我をしたら保護者が怒るかも…先輩がやっているように、とりあえず「ごめんね」を言わせて仲直りさせなきゃ…でも、この対応で本当に正しいのかわからない。
“仲直りさせる”ことがけんかのゴールだとする風潮が日本の保育現場では当たり前となっています。しかしあなたは今、本当にそれでいいの?と悩んでいますよね?私もあなたと同意見です。
あなたは本気でこどもと向き合おうとしている立派な先生だと思います。大丈夫、自信をもっていいんです。
もちろん、子どもが命に関わるようなけがをしないように、配慮をする必要はあります。
ただ、勉強したことがあるかもしれませんが、実は幼児期のけんかはとっても大切な学びの機会であり、大人がむやみに奪い取ってはなりません。
そこでこの記事では
・こどもにとってけんかとは?
・正しいけんかの仲裁の仕方
・けんかを成長にかえる環境の作り方
をご紹介していきます。
読み終えた頃にはこどものけんかの見方がかわり、どう対応したら良いかがわかるようになります。
ぜひ今後の保育の参考にしていってくださいね。
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目次
子どもにとってけんかは成長の機会
3~5歳の子どもはまだ自分の気持ちをうまく伝えることができません。ですので、そもそもけんかしたくてしているのではなく、したくないけどけんかになってしまうことがほとんどです。見方を変えると、不器用ながらも、一生懸命自分を表現しようとしているひとつの姿だと言えます。
「子どもにとってけんかは学び」という言葉をよく耳にすることがあると思いますが、
つまり、自分の気持ちがうまく伝えられないからこそけんかになり、けんかすることによって、自分の気持ちをどのように伝えれば良いのか、学ぶことができるということなんです。
けんかをして、必要な場面で先生が仲介することで、子どもは
・相手の気持ち、痛みがわかるようになり
・コミュニケーション能力が発達する
・問題解決能力を身につける
・けんかをすること以外にも解決方法があるのだと知る
・力の加減がわかるようになる
など多くの学びを受け取ることができます。
むしろ、小学生低学年までに、健やかにけんかをして、大人が必要な仲裁をし、学びを得ることができれば、その後いじめや暴力はもちろん。人を怪我させるようなけんかをするような心配もいらなくなります。
けんかの仲裁の4つのポイント
では先生は子どものけんかに際して、どのように仲裁をすれば、子どもがきちんとけんかから学びを得ることができるのか、4つのポイントをご紹介します。
①すぐに止めずにまずは見守る
すぐに止めてしまうのではなく、まずは自分の言いたいこと、言おうとしていることをしっかりと出し切らせてあげることが大事です。そうすることで、相手の気持ちを理解しようとする態度や、次にどうしたら良いのか考えられる体制が作れるからです。
反対に、けんかをすぐに止めてしまうと、自分の気持ちを出し切る経験ができません。けんかによって生まれた怒りのエネルギーが十分に発散されないためフラストレーションやイライラとなり、その後けんかという形ではなくいじめや暴力につながってしまう心配もあります。あるいは、先生の前ではけんかはせず、先生がいない時にけんかしたり、先生の言いなりになってしまう心配もあります。
ですので、まずは見守って、気持ちを出し切らせてあげることが大事です。
[memo title=”MEMO”]手を出してしまった時は、難しいですが、ひどくなる前に止めるのが良いです。ある程度のぶつかり合いは我慢して見守り、ひどくなりそうな時は、「痛いよ」と間に入り、お互いを別々の場所に移動させ、落ち着けるような環境を用意してあげましょう。まだ発散しきれていない場合は、言葉で言い合いができるようにします。[/memo]
②お互いの気持ちを大人が入って整理する
一通り気持ちをぶつけ合ったら、ここで大人が入り、けんかを整理します。ここが一番大事です。
けんかを成長につなげるために、まずは
・お互い、どう思っているのか
A君:「ぼくはこうしたかったんだ!」
B君:『でも!ぼくがさきだった!!』
とか、子どもって思っている以上に、自分の意見を持っています。どんどん引き出してあげましょう。先生がお互い平等に「そうかそうか、うんうん。」と傾聴してあげることが重要です。
・その言い分を認めて、整理する
「君はこう思ったから、嫌だったんだ。でもB君がさきだったから、嫌だったのか、そうか、だからけんかになっちゃったんだね。」
ふたり:「うん。」『うん。』
どちらが悪い、どちらが先にやったとかは置いておいて、子どもそれぞれの意見をきちんと認めてあげることで、子どもの心の中に、少し隙間ができます。そして大人が整理することで、自分の置かれている状況を冷静に考えることができるんです。
年齢によっても仲裁の仕方は変わってくるので、具体的な仲裁イメージはこちらの記事をご参考ください。
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③じゃあどうすればけんかにならなかったのか聞く
お互いの気持ちがわかったところで、ではどうすればけんかが防げたのか、を子ども同士で話し合ってもらいます。
これはなるべく子ども同士で話し合ってもらいます。難しいようなら先生が入って、
「じゃあ、つぎ同じようなことになったら、どうしよっか?」
と投げかけてあげてください。
ここでなかなか話し合いが進まないときはまだわだかまりが残っていることがほとんどですので、気持ちを出し合う段階にもどってもう一度言い合いをさせます。
④今どうしたいか、新しい行動を聞く
そして最後に、大人が一言、
「どうする??」とけんかの締めくくりをします。
ここまできたら、先生はもう必要ないくらい、本人たちは自分の気持ちも相手の気持ちもわかっているので、自分たちで、次の行動を決めることができます。
この決断を子どもに任せてあげることで、自分でけんかをどうするか、どう締めくくるのか決める機会を作り、問題解決能力も育ちます。
けんかを成長にかえる環境を大人が作る
ここまでけんかが成長につながること、けんかの止め方を紹介してきましたが、周りの先生とも、どう子どものけんかに向き合うのか、意見を合わせておかないと、
・あの先生はすぐにけんかを止めてしまう。
・この先生とは意見が合うから、けんかは見守ってきちんとサポートできる
と、あなた自身が周りに合わせて行動することになり、それは何より、子どもの混乱を招きます。
「なんでけんかをとめられたり、とめられなかったりするの?」と。
繰り返しになりますが、幼児期のけんかは重要な成長の機会です。先生同士がぶれていては子どもも成長できなくなってしまいます。
ですので、先生同士がみんなの子どもをみんなで育てていく。という心構えが何より大切です。
ただ、これは理想です。人間関係が複雑で難しい場合は、自分のクラスのこどもだけでもそのように見ていきましょう。
子どもはけんかをした後、自分の気持ちを相手に伝えたいし、わかって欲しいんです。そして相手の気持ちも理解できるような立派な心も持っています。
むやみに止められたり、仲裁されるより、「A君はこうおもったんだね、B君はこう思ったんだね。そっか、だからけんかになっちゃったんだね」
と受け止められたほうが、子どもの特性上、心が落ち着き、きちんとけんかを終わらせる準備ができます。これは私の幼稚園の先生の経験や、学んできたこその知識から言える普遍的なことです。
先生たちが子どものけんかを仲裁しなきゃ!と思う理由
私たちはどうしても「けんかは止めなければ。」と思ってしまいますよね?それは子どもの背後にいる保護者の存在、周りの先生たち、担任としての評価…邪魔するものはいろいろあるでしょう。
しかし、その多くの根本的な原因はおそらく、いまの大人たちもけんかを中途半端に止められてきたからなのではないでしょうか。
けんかの良さを知らないまま育ってきたから、けんかはよくない。いけないことだ。と思うのは当然です。きっとあなたの周りの先生たちも同じ状況なのです。でも、私が勉強したり、実際の現場に出てわかったことですが、けんかは必要であり、むやみに止めては子どもが逆にかわいそうなのだと言い切れます。
自分が実際にけんかの良さをわからないのに、子どもに対してけんかを見守るというのは勇気がいることだと思います。そう考えると今の時代、子どものけんかを正しく仲裁するのに必要なのは、知識じゃなくて子どもを信じる”勇気”なのだと、最近になって重く実感します。
今の時代ですから、子どもがけんかしてしまうことに、引け目を感じる保護者や先生をたくさんみてきました。だからこそ、子どもを信じる勇気を持って、あなたが子ども同士を認めてあげることで、
その子だけでなく、その子の保護者も「あ、けんかってこうやって仲裁すればいいんだ」とわかってくれるようになり、そこで、大人同士が今後もけんかを見守っていく体制になれれば、子どもの心はすくすく健康に育っていけます。
難しいかもしれないですけど、あなたの勇気が子どもの成長につながります。
さいごに
子どものけんかは「とにかく止めなきゃ」という大人の曲がった価値観で止めてしまってはいけません。
幼児期のけんかだからこそ、言い合い、気持ちを出し切ることができ、そこから相手の気持ちがわかる子、今後意見の食い違いがあった時に、けんか以外で解決しようとできる子に育っていきます。
ポイントは、けんかした子同士の心を認めてあげて、整理すること。
こどもにも「けんかしてしまった」という罪悪感は少なからずあります。それを無理やり終わらすのはあまりにもかわいそうです。先生が「こう思ったんだね、そっか、だからけんかになったんだね」
と一言だけでも声をかけてあげることができれば、子どもは安心し、「じゃあどうしようか。」という気持ちに向かうことができます。その結果あなたのクラスのこどもたちはけんかから多くの学びを得て、ぐんぐん成長していってくれることでしょう。
ぜひ、勇気を持って子どもを信じて、けんかを見守ってあげてくださいね。
明日の保育が、より良いものになりますように。最後まで読んでいただきありがとうございました。